リンゴ園から
海が遠くに見える
スプーンですくったような小さな海
その海が山まできて木をさらっていった
6年しねえとリンゴがなんねえ
わが子を育てるようなもんよ
頬かむりした奥さんも笑って話す
ネコも寒いべ
腹はすくべ
瓦礫でノラネコの囲いも作ってあった
やっと6年
大きく実ったリンゴ
大きな台風がもぎとっていってしまった
つぎの年の秋
菊池さんのリンゴが届いた
透みきった空
リンゴの香り
あの銀色の海
リンゴ園を駆けていた犬のラッキー
あれから
おやじ
おふくろ
おらの おくさんまでも
みーんな 亡くなってしまったべ
けんど おらには リンゴさ あるべ
おらは まんだまんだ 元気
うん うん ラッキーも 元気
らいねんも リンゴ送るよ
菊池さんのリンゴが届いた
透みきった風
リンゴの香り
あの銀色の海
リンゴ園を駆けていた犬のラッキー
負けないで
負けないで
わたしも生きるよ