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廃線

詩/中村多津子 曲/矢野正文
歌/田中友輝子 ピアノ/幸野紀子

暑い夏の日
セミの声だけが
にぎわっている駅
崩れ落ちそうな屋根
さびたベンチ

きちんと並んだ二本の線路 
そのわきには
背の高い雑草がびっしり

雑草をかき分け
線路の上に降り立つ

ごっとんごっとん
電車の振動が伝わってくるようだ
ごっとんごっとん
にぎやかなおしゃべりも
聞こえる

陽炎でかすむ駅の端
若い女性がぽつんと一人

あれは私だろうか

詩人コメント
 あれはいつ頃のことだろうか。ふっと立ち寄った小さな無人駅。静かで自然の景色が美しかった駅。再び訪れてみるとすでに廃線! 若かったあの頃を思い出してみる。

作曲家コメント
 この詩を読んだ時、私は昔どこかで見たような(デジャビュに似た)感覚を覚えました。それは遠い昔(子供の頃)、夏休みに家族で訪ねた故郷の風景だったかも知れません。感じたままの気持ちを素朴に日本古来の陽旋法を主として用い作曲しました。

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