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一本のバナナ

詩・高丸もと子 曲・冨田万理子

【原詩】
その夜
避難所には家族の安否を気遣う人々で
ごったがえしていた

ひとりの記者のポケットから
一本のバナナが落ちた
そのバナナを見つめている小さな子

お腹がすいているんだね
バナナは好きかい

男の子はうなずいて
バナナを受け取った

その子は食べないで
両手でもって歩いていく
隅っこにある棚
背伸びをしてやっと届いた棚の上に
バナナを置いた

みんなで分け合って食べる棚に
幼い子はバナナを置いた

三月の寒い夜
被災地の夜空には
満天の星が輝いていた

詩人コメント
幼い子のけなげな行動を伝えた新聞記事を私は忘れることができません。東日本大震災から今年で8年。思い合う人々の中で今は大きくなり優しい人になっていることでしょう。

作曲家コメント
男の子が今はどんな青年になっているのでしょうか?被災地が少しでも早く平穏な日常の暮らしができるように祈りを込めて、作曲しました。

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