詩・野呂昶 曲・熊谷美紀 歌・田中勉 ピアノ・幸野紀子
海の中を雪が走っている 海底へ 海底へ
一万メートルの日本海溝
かつて わたしは魚だった かつて わたしは貝だった かつて わたしは人間だった
波にくだかれ 時間にくだかれ 白い粒子となって 今 時速二十キロのスピードで 落下していく
詩人コメント 深海を雪が走っています。それはかつて陸に住む動物たち(人間も含む)の骨でありました。海の魚たちの骨でもありました。それが波に砕かれ、白い粒子となって深海に降っているのです。なんて哀切で美しい風景でしょう。
作曲家コメント 光の届かない一万メートルの深海へ音もなく降り積もっていくマリンスノー。かつて生きていた生物が雪のような粒子となって海底へと吸い込まれていく。海から生まれた生命がまたその奥へと静かに帰っていくように感じられた。